はじめに

この回では、暁星出身で現在は飯田橋ゼミナールの講師として教えている3人のOBが、
「どんなふうに教えているか」「自分の失敗や経験をどう活かしているか」について語ります。
苦手だった科目を克服した経験、内部事情を知るからこその教え方の工夫、そして小学生・中学生それぞれへのアプローチ。
“元・生徒”であり、“今・先生”だからこそ伝えられるリアルな教育の現場が見えてきます。
各講師が指導で大切にしていること
A(英語担当):
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得意な子には説明させる、自分の言葉で話させて、定着させる
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苦手な子には、フローチャート化して、見通しが立つようにしてあげる
- 勉強だけではなくて、将来につながるような“雑談”をするように心がけている
「生徒の手元を見ています。どこで詰まっているか、よくわかるから」
B(国語・社会・小学生担当):
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暁星小学校は独自問題が多く、市販の問題集では対策が難しい
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量より質、とよく⾔うが、その質は量をやらないと上がらない。しかし小学生は繰り返しを嫌がるので、いかに気分良くやらせるかが指導のポイント
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教科書のない科目では特に、配布プリントに先生の話を書き込む、プリントをファイルに挟んで整理する、⾒返したときに⾃分がわかるノートを作る、といった基本が大事
「覚えなきゃいけないと思って勉強するのではなくて、好きなことにつなげて勉強すると、一生モノの学びとなる」
C(数学・理科・小学生担当):
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中高は進度が速く、ついていけない生徒は置いてけぼり
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どこでつまずいているかを丁寧に確認し、わからないところを⼀個⼀個潰していく
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小学校は先生の板書が速いから、学校の黒板を写すのは⼤変。それでも、途中式を書く、字をきれいに書く、といった“当たり前”を意識する
「僕はめちゃくちゃノートを綺麗に書いていた。ノートを綺麗にしたいというモチベーションで勉強していたから」
書き起こし|Episode 4
● 指導時に意識していること(中高生)
A:最後に、今飯⽥橋ゼミナールで主に暁星の後輩の個別指導をしているわけですけれど、なにか注意していることはありますか。(Cが)メインで持っているのは、数学?
C:数学と理科。やっぱり暁星の授業、これはもう集団授業だからしょうがないんだけど、どんどん進むというか、数学が特に進みが速くて、わからない⼈は全部置いてけぼり、みたいな感じにされる。
だから、最初がわからないと全部わからない、ということがあるので、どこがわからないのか、というのは意識していますね。そのわからない部分をちゃんと聞いて、確かめて、ということはよくやっています。
A:特に数学は進度速い印象。⾼2後半で⼀応⾼3まで終わる、みたいな。
C:高2の2学期くらいで、数学Ⅲまで全部終わって、そこからまた2周⽬がはじまる。
A:ひたすら過去問演習を繰り返すみたいな授業もあったりするね。
C:そう、だからわからないところをちゃんと⼀個⼀個潰していく、ということを、気をつけています。
● 小学生の指導で大切なこと
A:どうですか、⼩学⽣は。
B:暁星⼩学校に関して⾔えば、昔ほどではないですけど、変わった問題がまだけっこう出る感は否めないので、基礎をガッツリ固めるというよりかは、過去問とかいろいろ解いて傾向をまずつかんでから、応⽤問題をやってみる、というのが⼤事だと考えています。
A:演習を繰り返す。
B:本当に演習を繰り返す、という感じですね。まあ、量より質、とよく⾔いますけど、その質は量をやらないと上がらないので、量をやろう、ということを⾔いたい。
A:⼩学⽣、繰り返すのを嫌がりそう。
B:嫌がるんですよね、これがけっこう。
A:たまに、ほかのブースの授業が聞こえてきて、なんか⼤変そうだなと。
B:そうですね。
C:暁星⼩学校は、独⾃の教材を使うことがよくあって。
A:市販の教材ではなく。
B:教科書がそもそもない科⽬もあって、配られたプリントが全部試験範囲で、「なんだ、それ」と言いたくなる科目もあるので、市販の問題集で対処するのがすごく難しいんですよね。
A:思い出したけど、俺らのフランス語の教科書も。
B:そうだね、中学で使っているフランス語の教科書は独⾃です。
A:めちゃめちゃ古い。
C:70年くらい前。
A:こんなの使わないだろう、みたいな⽂章があったり……なんか思い出した。
B:そういう点では、プリントにメモを書く癖をつけるとか、当たり前ですけど、プリント類をなくさないとか、プリントがそのままランドセルの中で積もっていっているから、ちゃんとファイルに挟んで整理する…
A:⼤事だね。
● 学校の授業の受け方
A:僕は中⾼⽣の英語を⾒ているんですけど、できる⼦とできない⼦の気持ちが両⽅わかる。
英語はずっと得意だったので、「ちんたらしてんじゃねえよ」みたいな子の気持ちもわかるし、逆に数学は死ぬほど苦⼿だったので全然わかんない⼦の気持ちもわかる。
得意な⼦だと、僕が逐⼀解説するんじゃなくて、⾃分でしゃべって解説してもらって、眠くならないようにしているし、逆にできない⼦だと、ひたすらフローチャートのように、これを⾒たら、とりあえず過去形を思い出そう、みたいな感じで伝えています。
あと、学校の授業中は寝るな、と⾔っていますね。
C:それは本当にそうですね。
A:それと、⼿元はけっこう⾒てあげていますね。
B:ああ、そうだね。
A:どこで詰まっているか、わかるからね。
C:途中式、本当に今、書かない⼦が多いから。式をちゃんと書くとか、字をきれいに書く、みたいな、そういう当たり前のところは本当に⼤事だから。
A:そうそう、ノートにグチャグチャに書いてきて、「なんなの、これ」みたいなことが多いから。
学校であまり習わないのかな?
C:たぶん⾔われてはいるんだろうけど、やっぱり先生の板書が速いのかな。
A:ああ、なるほど。
C:仕⽅ないところはあるんですけど、学校の黒板を写すときの⼤変さは。
B:⼩学⽣だと、「とりあえず書けばオッケー」みたいに考えてる子が多そう。写したノートを⾒返すということが、あまり頭になさそう。
A:たしかに。⾒返したときに⾃分がわかるノートを作ってね、ということだね。
しかもずっと⼤事ですからね、大学に⼊っても。今でもたまに「何、これ」みたいになるので…
C:僕はめちゃくちゃノートを綺麗に書いていた。ノートを綺麗にしたいというモチベーションでやっていたから。それもいいですよ。
A:テスト前、友達に⾒せられるくらいのノートを作ってほしいですね。俺、ひたすら友達のノートを⾒る側でしたけど(笑)。
あと⼼がけていることとしては、定期テストの点を取るのも⼤事だけど、その後につながるというか、雑談っぽくはあっても勉強だけじゃない、みたいなところを教えられたらいいかな、と思っていますね。
学校の授業だけど、特別ゲストで、⼀橋の法学部かロースクールの⼈が来た授業(*OBの講演会。医師や法曹、外交官や国際交流などの回があった。言及しているのは、刑罰をテーマにした回)があって、僕はそれで進路を決めたみたいなところがあって。
B:そうなん?
A:何が⾃分のためになるかわからないので、医学部を⽬指す⼈が多い学校だからこそ、視野を広く持ってほしいなと思って、雑談っぽいことはいろいろ⾔うようにしていますね。
C:自分は、飯田橋ゼミナールで教わった先⽣の授業を真似している節がちょっとあって。
⾃分は中高時代に化学がすごく苦⼿で、暁星の化学の先⽣もすごく癖のある⼈で。
A:ああ、なんかありましたね…
B:嫌な記憶だな…
A:なんか、怒られていましたね…
C:今教えていても、生徒がその先⽣の授業に当たっていることがあるので…
それこそ、飯田橋ゼミナールで化学の授業を受けて、なるほど、とようやく理解ができたということがあったので、そのときの授業を思い出して参考にしたり、とかはありますね。
⾃分ができない⼈間だったからこそ、というのもありますね。
A:なるほど。暁星は癖の強い先⽣が多かったね。まあ、どこの学校でも、そう思っているのかもしれないけど。
(Bは)どうですか? 古⽂もやっていて。
C:古⽂やっていますよね。
A:なかなか⾒なくないですか? 古⽂を教えている⼈。
B:いないですね。
A:よく覚えてるね。俺、古文も⼀応やったけど、全く覚えてないもん。
B:古⽂だから覚えているんでしょうね。本やYouTubeとか⾒ていても、古⽂とか⾔語系が嫌いじゃなかったので。
英語は別として、⾔語系は嫌いじゃなかったので、だから覚えているんだと思いますね、うん。
A:今の⼤学の学部とはあまり関係ないよね?
B:全く関係ないですね。
A:不思議。
B:あ、昔の⾵習が⾯⽩いというか、今と全く違う習慣だったり知識だったりするので、それが⾯⽩くて、ずっと覚えているんだと思います。
C:勉強の内容より、その周りのこと。
B:そうそう、それにプラスアルファで覚えているのが、まあ助動詞だったりとか、単語の意味だったりとか。
だから、覚えなきゃいけないと思って勉強するんじゃなくて、他の好きなことにつなげて勉強する、というのは⼤事なんですね。
A:うん、そうですね。
ざっとこんな感じで、暁星の雰囲気が伝わったらいいなと思っています。
B:ありがとうございました。
C:ありがとうございました。
シリーズを終えて|OB講師3人からのメッセージ
暁星で過ごした日々は、それぞれにとって「楽しかった思い出」だけでなく、「あのとき、こうしておけばよかった…」という後悔の連続でもありました。
だからこそ、いま指導する立場になったとき、後輩たちに本気で伝えたいことがあります。
「早めに始めよう。誰も丁寧には教えてくれない。だからこそ、自分から学びに行こう」
「わからないことを、わからないままにしないこと」
「進路を考えるのが遅かった。でも、それに気づいてからでも、間に合った」
このシリーズが、暁星を目指す方、現在通っている方、また保護者の皆さまにとって、少しでも参考になることを願っています。
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最後に
「過去の自分たちに届けたいと思って話しました」
迷ったり、つまずいたりしても、そこからの“巻き返し”は誰にでもできます。
少し先を歩いてきた僕たちの話が、あなたのヒントになれば嬉しいです。